2002年1月15日~27日

245_89_f1
光、満ちる空のむこうへ                      
  鷹見明彦(たかみあきひこ/美術評論家) 
中略-与那覇君の作品をはじめて観たのは、3年ほど前、コンクール(第3回アート公募 1998)の審査に際してでした。今日にいたる「光の匂ひ」のシリーズの初期作でしたが、-中略- 一見して、20世紀後半を代表するドイツの画家、ゲルハルト・リヒター風のフォトペインティングの影響をまともに受けた作風でした。すべての面で現代という時代に絵画を制作する根拠を問う地点から厳密に作品を構築しているリヒターのような存在に対して、正面から向きあうのは、Jリーグのチームがワールドカップに出場するようなものですが、多くの情報とメディアに囲まれたこの時代にあえて絵を描くことを選択したというなら、本来避けては通れないはずの巨きな山なのです。与那覇君の作品からは、表面的な、あるいは方法的な模倣の域にとどまらずに、絵を描く行為自体へのフェティッシュともいえる陶酔がむしろ時代錯誤なまでに伝わってきました。その際どい放熱のバランスによって、絵画以外の様々な形式の作品とも競うコンクールで準大賞を得ました。 
-中略-光自体を描こうとする行為には、背理がありますが、そうでありながらそれを成そうとするところに人間という存在の本質と憧憬があるのは、イカロスをはじめとする多くの神話が物語るとおりです。時は移っても、光に愛でられた南島に還る光の絵画があることは、何時も鏡を作ろうとして専心した懐かしくも初初しい人びとの環があった事実を思い出させもするのです。