1985年8月6日~18日
18世紀末は、庶民が初めて自らを生き始めた時代―ゴヤの版画を見ているとそう感じさせる。
「自分がある特定の思想を持ち、人間がそなえているべきある種の尊厳を守るべきだと信ずるようになった」(ゴヤが親友に宛てた手紙の一部である)1789年当時のスペイン王カルロス四世は、43才のゴヤを宮廷画家に任命した。しかし、時はフランス革命の年、ヨーロッパ諸国の王朝が哀退し、市民が自由思想を獲得していく攻防と危機の真只中。大病をわずらい聴覚を失ったゴヤは、その鋭い洞察力と深い思想性で当時の人々の無知、愚劣、悪徳、社会の偏見、悪習、嘘を版画でもって表現しきったのである。今回はその版画シリーズの中から1799年に出された有名なLOS CAPRICHOS(気まぐれ)の作品34点を展示即売致します。暑さ真っ盛りの沖縄、ゴヤ絵画のリアリズムの持つ普遍性はきっと皆さまの心に涼風をもたらしてくれるに違いありません。どうぞご高覧ください。