2002年5月14日~26日
名嘉睦稔・カミとヒトのあいだ
松山龍雄(まつやまたつお/季刊「版画芸術」編集長)
-中略-表現とか作家の個性などという価値観は、たかだか「近代芸術」の生み出した価値尺度でしかない。いささか大げさに言えば、睦稔の背負っている世界は「近代」という時代概念を越えている。言ってみれば睦稔という作家はカミとヒトの世界をつなぐ境界上に位置するシャーマンのような存在なのである。だからといって、睦稔を怪しげな神秘主義やアニミズムに押し込めようというのではない。少なくとも神智学にかぶれるカンディンスキーやモンドリアン以上に、睦稔自身の体内にはカミや霊のエネルギーを宿しているのである。-中略-睦稔は鳥や魚の声を聞き、サンシン片手に謡い、版画を彫る。「芸術」などという狭苦しい枠組みを離れて、古代から現代へ、沖縄から世界へとまさに時空を越えて、人間の原点をメッセージできるおそらく最後の作家なのだろう。