2002年7月16日~28日
美しき迷宮
山本秀夫(やまもとひでお/美術評論家)
-中略-粟国の作品と対峙するとき、さまざまな意味で、自らが関わる時間性を問われているような思いにかられる。「作品に内包化された時の流れ」が、私たちに問うのだ。「あなたにとって、時とは何か?あなたはどのような時の流れに、身を置いているのか」と。私たち自身、内包化された時の流れに身を委ねているが、それは、生命体としての私たちの根の事柄である。物質は、永遠の旅をしているが、生命体は、世界の連関の中で、時の流れに従って、その物質の不思議な集合体(結び目)として、存在する。粟国の作品は、こうした生命体のありようと、同定する構造によって、成り立っている。これが、粟国の作品の最大の謎である。時間の内包化は、そのひとつの現れにすぎない。-以下省略-