1985年7月23日~28日

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 4,5年前、初めて伊江氏の作品を見た時、なんとダイナミックな画家だろうと思った。墨をたっぷり含んだ大きな筆で画面一杯に暴れまくった作品は、真黒い太い線で描かれ、力強く、大胆な躍動感をみなぎらせていた。墨象の抽象的作品を沖縄で見る機会があまりなかった私にとって、あのダイナミックな1000号の作品はかなり印象に残った。 
その後の伊江氏の作品は「あかばなシリーズ」と「珊瑚礁シリーズ」が主だったように思う。近年の作品は、以前のあの大暴れの画面が少し落ち着き払ったような画面へと移行し、100号大の大作から小味のきいた小品に至るまで、そのテーマのもつ意味性に奥行きと深まりが感じられ、安定したフォルムと詩情を獲得したように見える。書道からスタートした氏が独自のフォルムを生みだすまでかなりの時間と研鑽を要したに違いない。最近はその安定したフォルムに多様なテーマの広がりが加わり、書道家というよりも造形作家としてのイメージが明確に見えてきたように思える。とどまることを知らない氏のバイタリティーが明確に見えてきたように思える。とどまることを知らない氏のバイタリティーのある創造欲は文字による書作と墨造形の世界と平行しながら版画への展開を試みる。版画作家の少ない沖縄にあって大いに期待を寄せる一人である。