1985年9月24日~29日

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数年前、沖縄ジァンジァンにおいてスライドによるTOX・MAXの世界を見た。その時これまでの私の真喜志勉像が180度急転し、コーフンしたことを覚えている。 
1号線を行き交う米軍車輌のナンバーリング、荷物パッケージ、金網ごしにファントムジェット戦闘機に見入るTOM少年、異国から入ってくるおびただしい量のアートフルな物体はTOM少年の感性を十分すぎるほど刺激した。スライドは氏の十代の頃から今日までに収集したグラフィカルな作品が延々と重ねられ、その終盤では、米軍家族舞台の廃屋がネガティブの画面として投影された。それは我々見る側に沈黙と思索をしいるかのように、幕は閉じた。おそらく氏はその時「戦後」をアーティストとして視覚的統括をしたにちがいない。私はシャイで真撃なアーティストに出会った悦びを感じた。 
以後の氏の作品は黒の沈黙しきった画面とモダンな造形感を基調に、音像から画像へ、音楽メッセージを平面(絵画)世界へ、導入しようと試みた作品が多かったのではないだろうか。アドリブを利かせたさり気無い線と色彩は、チックコリヤのジャズフィーリングであり、パワフルにして繊細な構成はサッチモの肉声が聞こえる。その純度と完成度の高さは、正に氏の人格そのものであり、現代人、アーティストTOM・MAXではないだろうか。 
氏の話によれば、今回の展示会で黒のシリーズや各アートの分野に与える影響が大きいと思う私にとって、今回の「黒の終結」は、次に何を生み出すか大いに楽しみである。